2016年11月6日日曜日

皇居のお濠の植物園

最近はたくさんのランナーが行き交う皇居のお濠端。歩道を歩きながらふと見下ろしたお濠の土手にはかわいいピンク色の花が咲き誇っていました。この場所が公園顔負けの植物の宝庫だと気づいたのは、東日本大震災が起こった年の秋。あるウェブサイトに東京の草木について書こうと、国会議事堂の前の植え込みの車輪梅を見に行った帰り、お濠端から日比谷の方に歩いて行こうとしていた時のことでした(国会前の車輪梅の話も面白いのですが、それはまたあらためて)。

11月のはじめの午後3時過ぎ、傾きはじめたお日様に時折薄い雲がかかって、水面に反射した初冬のぼんやりした光と影が土手の草花をやわらかく包んでいました。白詰草のような形をしたピンクの花がたくさん咲いています。周囲のネコジャラシとのバランスは絶妙で、もうそのままで生け花のよう。利休が「花は野にあるように」と言ったというのがわかります。背景となった水面には暮れかかる空の雲が波に揺れて、カメラで切り取ると別世界が現れました。


縦の写真の方が生け花感があるので、こちらもアップ。こういう花の姿を見ていると、人間の作為など自然の無意識の前にはどれほどのもんかと感じさせられるわけですが、自然が無意識なのかどうか、実は意識とか法則があるのかもしれないなんてことも考えてしまいます。ちなみに、このピンクの花はムラサキツメクサ。紫色の花の咲くツメクサだそうです。






下の写真はヒメジョオンとオヒシバ(?)。この根元をきゅっと掴めば、そのまま秋の花束になりそうです。水面には濠の向こう岸の建物が映っていました。



お日様にかかった薄い雲が切れて、夕日がネコジャラシとオヒシバを照らした瞬間。光が当たって、草花たちは舞台に上がったように輝きます。


そして、あらためて強調したいのは背景に水があることの美しさ。お濠が特別なのは湛えた水のすぐ水際に土手の斜面があること。土手に咲き乱れる花を見下ろせば、たいていの場合、背景には水面が見えるのです。こんなに草花を美しく見せてくれる場所が他にあるでしょうか。この日、このことに気づいた私は、それから一年の間、時々、皇居を訪れては春夏秋冬のお濠端の植物をカメラに収めました。

今年は春から夏にかけて引っ越しなどで忙しく、皇居にでかけていないため、今年の秋のお濠端の植物がどうなっているかは確認していないのですが、以前、車で通りかかった時にちらっと見た感じだと、あまり雑草が繁茂していないように見えました。友人に話すと、この写真を撮った2011年〜というのは、行政も混乱していて、ちゃんと土手の整備をできなかったから、かえって草が繁茂してたのじゃないかなどと言っていましたが、真偽は確認しておりません。今だって、ちゃんと見に行けば、これらの写真のような花が咲いているかもしれない。今の生活にも落ち着いてきたので、そろそろお濠端に行ってみるかな。

というわけで、これからこれまで撮り貯めた皇居のお濠の植物を少しずつ紹介していきます。

私のもう一つの写真ブログ、不忍池の蓮の一年を撮った


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